data.table
高速なメモリ内データ処理のためのパッケージ。大規模データセットの操作に特化し、dplyrlよりも高いパフォーマンスを実現。独自の構文でフィルタリング、グループ化、集約を効率的に実行。
GitHub概要
Rdatatable/data.table
R's data.table package extends data.frame:
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フレームワーク
data.table
概要
data.tableは、R言語で大規模データセットを高速かつメモリ効率的に処理するためのパッケージです。独自の構文により、フィルタリング、集約、結合などの操作を極めて高いパフォーマンスで実行できます。
詳細
data.table(データテーブル)は、Matt Dowleらによって開発されたRの高性能データ操作パッケージです。2006年に開発が始まり、C言語で実装された内部処理により、標準のdata.frameよりも桁違いに高速な処理を実現しています。DT[i, j, by]という独自の構文は、SQLのWHERE、SELECT/UPDATE、GROUP BYに相当する操作を一行で表現できます。特徴的なのは参照による更新(:=演算子)で、データのコピーを作らずに直接変更することで、メモリ効率を大幅に向上させています。fread()とfwrite()関数による高速なファイルI/O、並列処理対応、メモリマッピングなど、ビッグデータ時代に必要な機能を網羅。金融、製薬、通信業界など、大規模データを扱う分野で広く採用されています。外部依存関係がないため、プロダクション環境での利用にも適しています。
メリット・デメリット
メリット
- 圧倒的な処理速度: C言語実装により極めて高速
- メモリ効率: 参照による更新でコピーを最小化
- 簡潔な構文: DT[i, j, by]で複雑な操作を一行で記述
- 高速ファイルI/O: fread/fwriteで大規模ファイルも高速処理
- 並列処理対応: マルチコアCPUを自動的に活用
- 依存関係なし: base R以外の依存がなく安定
デメリット
- 学習曲線: 独自構文の習得に時間が必要
- 可読性: 慣れていないと読みにくい
- tidyverseとの差異: dplyrユーザーには違和感
- デバッグの難しさ: 参照による更新は追跡が困難
主な使用事例
- 金融データの高速分析
- ゲノムデータの処理
- ログファイルの大規模解析
- リアルタイムデータ処理
- 高頻度取引データの分析
- IoTセンサーデータの集約
- 大規模シミュレーション結果の処理
基本的な使い方
インストール
# CRANからインストール
install.packages("data.table")
# 開発版をインストール
install.packages("data.table",
repos = "https://Rdatatable.gitlab.io/data.table")
# ライブラリの読み込み
library(data.table)
基本的な操作
# data.tableの作成
DT <- data.table(
id = 1:1000000,
group = sample(LETTERS[1:5], 1000000, replace = TRUE),
value = rnorm(1000000),
date = seq(as.Date("2020-01-01"), by = "hour", length.out = 1000000)
)
# i: 行のフィルタリング
DT[group == "A"]
DT[value > 0 & group %in% c("A", "B")]
# j: 列の選択・計算
DT[, .(id, value)] # 列の選択
DT[, mean_value := mean(value)] # 新しい列を追加(参照による更新)
DT[, .(avg = mean(value), sum = sum(value))] # 集約
# by: グループ化
DT[, .(mean_value = mean(value)), by = group]
DT[, .(count = .N), by = .(group, year = year(date))]
# 複合操作
DT[value > 0,
.(avg_value = mean(value),
count = .N),
by = group][order(-avg_value)]
高度な操作
# 参照による複数列の更新
DT[, `:=`(
value_squared = value^2,
value_log = log(abs(value) + 1),
group_mean = mean(value)
), by = group]
# 条件付き更新
DT[group == "A", value := value * 1.1]
# 高速結合
DT2 <- data.table(
group = LETTERS[1:5],
multiplier = c(1.1, 1.2, 1.3, 1.4, 1.5)
)
DT[DT2, on = "group", value := value * multiplier]
# ローリング結合
DT[, rolling_mean := frollmean(value, 24), by = group]
# shift操作(ラグ/リード)
DT[, prev_value := shift(value, 1), by = group]
DT[, next_value := shift(value, -1), by = group]
# 高速ファイル読み書き
fwrite(DT, "large_data.csv")
DT_read <- fread("large_data.csv")
実践的な例
# 時系列データの集約
hourly_stats <- DT[, .(
mean_value = mean(value),
median_value = median(value),
sd_value = sd(value),
count = .N
), by = .(
group,
hour = hour(date),
date = as.Date(date)
)]
# ウィンドウ関数
DT[order(date), `:=`(
cumsum_value = cumsum(value),
rank_value = frank(value),
pct_rank = percent_rank(value)
), by = group]
# 効率的なサブセット
setkey(DT, group, date) # キーを設定
DT["A"] # 高速なバイナリサーチ
DT[.("A", "2020-06-01")] # 複合キーでの検索
最新のトレンド(2025年)
- 並列処理の強化: より多くの操作が自動並列化
- GPU対応の検討: NVIDIA RAPIDSとの統合
- ストリーミング処理: リアルタイムデータ処理の強化
- クラウド最適化: S3/GCSからの直接読み込み
- Arrowフォーマット対応: より高速なデータ交換
まとめ
data.tableは2025年においても、Rで最速のデータ操作パッケージとしての地位を維持しています。特に金融や製薬業界など、大規模データを扱う分野では必須のツールとなっています。独自の構文は学習コストが高いものの、一度習得すれば、その処理速度とメモリ効率は他の追随を許しません。ビッグデータ時代において、Rで高性能なデータ処理を実現するための第一選択肢です。