dplyr
tidyverseの中核パッケージ。データフレーム操作のための文法を提供し、filter、select、mutate、summarize、arrangeなどの動詞でデータを直感的に操作。パイプ演算子と組み合わせて複雑なデータ変換を簡潔に記述可能。
GitHub概要
tidyverse/dplyr
dplyr: A grammar of data manipulation
トピックス
スター履歴
フレームワーク
dplyr
概要
dplyrは、R言語でデータ操作を直感的かつ効率的に行うためのパッケージで、tidyverseエコシステムの中核を成すツールです。一貫性のある「動詞」関数により、データの選択、フィルタリング、変換、集約を簡潔に記述できます。
詳細
dplyr(ディープライアー)は、Hadley Wickhamによって開発されたRのデータ操作専用パッケージです。2014年に初版がリリースされ、以降Rでのデータ分析のデファクトスタンダードとなっています。SQLライクな操作をRのデータフレームに対して行うことができ、select()、filter()、mutate()、summarize()、arrange()などの直感的な動詞関数を提供します。特徴的なのはパイプ演算子(%>%)との組み合わせで、複雑なデータ変換を読みやすく記述できることです。C++で実装された内部処理により高速な動作を実現し、大規模データセットの処理にも対応。data.table、arrow、duckdbなどのバックエンドとの統合により、メモリに収まらないビッグデータの処理も可能です。tidyverseパッケージ群との完璧な統合により、データの読み込みから可視化まで一貫したワークフローを構築できます。
メリット・デメリット
メリット
- 直感的な文法: SQLに似た動詞関数で学習コストが低い
- 可読性の高いコード: パイプ演算子で処理フローが明確
- tidyverseとの統合: 他のパッケージとシームレスに連携
- 高速な処理: C++実装により大規模データも効率的に処理
- 豊富なドキュメント: 充実したチュートリアルとコミュニティサポート
- バックエンド拡張: data.table、arrow、duckdbとの統合可能
デメリット
- メモリ使用量: 大規模データでは要注意
- 学習曲線: tidyverse全体の理解が必要
- パフォーマンス: data.tableより遅い場合がある
- 非標準評価: プログラミング時に注意が必要
主な使用事例
- データクリーニングと前処理
- 探索的データ分析(EDA)
- レポート作成とダッシュボード開発
- 統計解析の前処理
- 機械学習のデータ準備
- ビジネスインテリジェンス
- 研究データの整形
基本的な使い方
インストール
# CRANからインストール
install.packages("dplyr")
# tidyverse全体をインストール
install.packages("tidyverse")
# 開発版をインストール
devtools::install_github("tidyverse/dplyr")
基本的な操作
library(dplyr)
# サンプルデータ
df <- data.frame(
name = c("Alice", "Bob", "Charlie", "David"),
age = c(25, 30, 35, 28),
salary = c(50000, 60000, 70000, 55000),
department = c("Sales", "IT", "IT", "Sales")
)
# select: 列の選択
df %>%
select(name, salary)
# filter: 行のフィルタリング
df %>%
filter(age > 28)
# mutate: 新しい列の追加
df %>%
mutate(bonus = salary * 0.1)
# group_by + summarize: グループ化と集約
df %>%
group_by(department) %>%
summarize(
avg_salary = mean(salary),
count = n()
)
# arrange: 並び替え
df %>%
arrange(desc(salary))
# 複数の操作を連鎖
df %>%
filter(department == "IT") %>%
mutate(total_comp = salary * 1.1) %>%
select(name, total_comp) %>%
arrange(desc(total_comp))
より高度な操作
# 複雑な条件でのフィルタリング
df %>%
filter(age >= 28 & salary > 55000)
# 複数のグループ化
df %>%
group_by(department, age_group = cut(age, breaks = c(0, 30, 40))) %>%
summarize(
count = n(),
avg_salary = mean(salary),
.groups = 'drop'
)
# across()を使った複数列への操作
df %>%
mutate(across(where(is.numeric), ~ . * 1.05))
# join操作
departments <- data.frame(
department = c("Sales", "IT"),
location = c("Tokyo", "Osaka")
)
df %>%
left_join(departments, by = "department")
最新のトレンド(2025年)
- duckdbバックエンド統合: より高速な大規模データ処理
- arrow統合の成熟: Parquetファイルの効率的な処理
- tidypolarsとの連携: Polarsの高速性をdplyr文法で利用
- 型安全性の向上: より厳密な型チェック機能
- 並列処理の強化: マルチコア処理の最適化
まとめ
dplyrは2025年においても、Rでのデータ操作の第一選択肢として不動の地位を保っています。直感的な文法、強力な機能、そして活発なコミュニティにより、初心者から上級者まで幅広いユーザーに支持されています。ビッグデータ時代に対応した新しいバックエンドとの統合により、その適用範囲はさらに拡大しています。