言語バージョン管理ツール

frum（Fast Ruby Version Manager）

概要

frumは、Rustで実装された高速でモダンなRubyバージョン管理ツールです。2021年に登場した新しいツールで、rbenvより約7秒速く、shimを使わない直接的なアプローチにより圧倒的な速度を実現しています。インストーラーも内蔵しており、追加のツールなしでRubyのインストールから管理まで完結できます。

詳細

主な特徴

• Rust実装: システムプログラミング言語による高速実行
• 超高速: rbenvと比較して桁違いの速度改善
• オールインワン: Rubyインストーラー内蔵で追加ツール不要
• shimレス: プロキシを使わない直接実行
• 依存関係なし: 単一のRust実行ファイルで完結
• クロスプラットフォーム: Linux、macOS、Windowsサポート（WSL推奨）

技術的優位性

frumの速度優位性は以下の設計判断によるものです：

• ネイティブバイナリ: Rustでコンパイルされた単一実行ファイル
• 直接PATH操作: shimやラッパースクリプトを介さない
• 効率的なキャッシュ: Rust の所有権システムによる最適化
• 並列処理: Rustの安全な並行性を活用

2024年の評価

• 「速度と機能のバランスを求めるならfrum」と評価
• asdfが遅いと感じる場合の推奨代替手段
• Rust製ツールの成熟により安定性も向上

メリット・デメリット

メリット

• 圧倒的な速度: 起動とバージョン切り替えが瞬時
• シンプルなインストール: Homebrewやwingetで一発インストール
• 統合インストーラー: ruby-buildやruby-install不要
• メモリ効率: Rust実装による最小メモリ使用
• モダンな設計: 2020年代の開発環境に最適化
• 設定の柔軟性: インストール時のオプション指定が容易

デメリット

• 歴史が浅い: 2021年リリースでコミュニティがまだ小さい
• 機能限定: プラグインシステムなどの拡張性なし
• rbenv互換性不完全: すべてのrbenv機能をサポートしていない
• ドキュメント不足: 公式ドキュメントがまだ発展途上
• エッジケース: 特殊な環境での動作報告が少ない

参考ページ

• frum GitHubリポジトリ
• frum Rust.Tokyo 2021発表
• Mac Install Guide - frum
• Ruby Version Managers比較

書き方の例

インストール

# Homebrewでインストール（macOS/Linux推奨）
brew install frum

# Cargoでインストール（Rust環境がある場合）
cargo install frum

# wingetでインストール（Windows）
winget install TaKO8Ki.frum

# バイナリを直接ダウンロード
# GitHubのReleasesページから最新版をダウンロード
wget https://github.com/TaKO8Ki/frum/releases/latest/download/frum-{version}-{platform}.tar.gz
tar -xzf frum-{version}-{platform}.tar.gz
sudo mv frum /usr/local/bin/

シェル設定

# ~/.bashrcに追加
eval "$(frum init)"

# ~/.zshrcに追加
eval "$(frum init)"

# fishの場合（~/.config/fish/config.fish）
frum init | source

# PowerShellの場合（Windows）
Invoke-Expression (& frum init)

基本的な使い方

# 利用可能なRubyバージョンを表示
frum install --list
frum install -l

# 最新の安定版をインストール
frum install

# 特定バージョンをインストール
frum install 3.3.0
frum install 3.2.3

# インストール済みバージョンの確認
frum list
frum ls

# グローバルバージョンの設定
frum global 3.3.0

# 現在のバージョン確認
frum current
ruby --version

インストールオプション

# OpenSSLディレクトリを指定
frum install 3.3.0 --with-openssl-dir=/usr/local/opt/openssl

# jemallocを有効にしてインストール
frum install 3.3.0 --with-jemalloc

# 複数のオプションを指定
frum install 3.3.0 \
  --with-openssl-dir=/usr/local/opt/openssl \
  --with-readline-dir=/usr/local/opt/readline \
  --enable-shared

# デバッグシンボル付きでインストール
frum install 3.3.0 --enable-debug

プロジェクトごとの管理

# プロジェクトディレクトリで設定
cd /path/to/myproject

# ローカルバージョンを設定（.ruby-versionファイル作成）
frum local 3.3.0

# .ruby-versionファイルの確認
cat .ruby-version
# 3.3.0

# ディレクトリ移動時の自動切り替え
cd ..
frum current  # グローバルまたは親の設定
cd myproject
frum current  # 3.3.0に自動切り替え

バージョン管理

# 一時的なバージョン切り替え（現在のシェルのみ）
frum shell 3.2.3
ruby --version  # 3.2.3

# シェルを終了すると元に戻る
exit
ruby --version  # 元のバージョン

# 特定のコマンドを別バージョンで実行
frum exec 3.2.3 -- ruby script.rb
frum exec 3.2.3 -- bundle install

# アンインストール
frum uninstall 3.1.0

高度な使い方

# バージョンのエイリアス設定
frum alias create stable 3.3.0
frum global stable

# エイリアスの一覧
frum alias list

# エイリアスの削除
frum alias delete stable

# 環境変数の確認
echo $FRUM_DIR         # frumのインストールディレクトリ
echo $FRUM_RUBY_BUILD_MIRROR  # カスタムミラーURL（設定時）

# キャッシュのクリア
frum cache clear

Bundlerとの連携

# プロジェクトセットアップ
mkdir myapp && cd myapp
frum local 3.3.0

# Bundlerのインストール
gem install bundler

# Gemfileの作成と依存関係インストール
bundle init
bundle add rails
bundle install

# .ruby-versionをバージョン管理に含める
git add .ruby-version Gemfile Gemfile.lock
git commit -m "Setup Ruby 3.3.0 with dependencies"

CI/CD環境での使用

# GitHub Actionsでの例
# .github/workflows/ci.yml
- name: Install frum
  run: |
    curl -L https://github.com/TaKO8Ki/frum/releases/latest/download/frum-linux.tar.gz | tar xz
    sudo mv frum /usr/local/bin/
    
- name: Setup Ruby
  run: |
    frum install $(cat .ruby-version)
    frum global $(cat .ruby-version)
    
- name: Install dependencies
  run: bundle install

トラブルシューティング

# frumの動作確認
frum --version
which frum

# デバッグモードで実行
FRUM_DEBUG=1 frum install 3.3.0

# インストールログの確認
cat ~/.frum/install.log

# 設定のリセット
rm -rf ~/.frum
eval "$(frum init)"

# パスの確認
echo $PATH | grep frum

# 手動でパスを追加（一時的）
export PATH="$HOME/.frum/bin:$PATH"